2026年7月1日現在、世界の再生可能エネルギー市場は大きな転換点にあります。世界的な導入拡大が続く一方で、日本国内では制度的・経済的な課題が浮き彫りになっており、まさに「量から質・安定性へのシフト」を求められるフェーズに入っています。
1. 世界の再エネ動向:VREの急拡大と系統の課題
2026年は、世界全体の発電量シェアにおいて再生可能エネルギーが石炭を抜いて首位に立つ見込みです。
太陽光の一極集中: 世界の新規追加容量の約8割を太陽光が占め、風力と合わせた変動性再生可能エネルギー(VRE)のシェアは2割近くまで拡大しています 。ieej.or.jp
系統柔軟性の確保: 再エネシェアの拡大に伴い、系統の混雑や出力制御(出力抑制)の増加が深刻化しています。これを受け、マイナス価格に対応可能な蓄電池システム(BESS)への投資と、系統柔軟性を確保するための技術開発が急務となっています ieej.or.jp 。mirasus.jp
中国の政策調整: 世界の再エネ牽引役である中国では、支援制度が固定価格買取制度(FIT)から入札・CfD(差額決済契約)へと移行しており、これに伴う短期的・調整的な成長の鈍化が注視されています 。ieej.or.jp
2. 日本国内の状況:再エネ調達「三重の衝撃」
日本国内では、再エネの主力電源化を目指しつつも、コスト増と市場ルールの厳格化という高い壁に直面しています。
調達戦略を揺るがす「三重の衝撃」: 2026年の電力市場では、以下の3点が再エネ調達戦略の前提を変えています 。enegaeru.com
容量市場負担の激化: 全国平均約定価格が7,552円/kWとなり、北海道・九州など地域によっては8,000円台後半に達するなど、コスト負担が重くなっています。
FIPの適用拡大: フィードインプレミアム(FIP)制度の対象が50kW以上の電源へ拡大される動きがあり、より市場リスクを意識した運用が求められています。
インバランス料金の引き上げ: 需給逼迫時の上限が300円/kWhまで引き上げられたことで、電力調達の予見性が低下しています。
洋上風力の逆風: 2025年8月の三菱商事による秋田・千葉の着床式洋上風力3海域からの撤退が象徴するように、建設費の暴騰やサプライチェーンの逼迫、インフレ・為替・金利上昇といった複合要因により、大型プロジェクトの採算性が厳しくなっています 。mirasus.jp
3. 最新の取組事例と市場トレンド
困難な環境下でも、民間企業による先駆的な調達モデルやプラットフォーム構築が進んでいます。
「追加性」を重視した環境価値: NTTグループが木質バイオマス発電所を活用したバーチャルPPAを実施し、ビル単位での「追加性のある実質再エネ100%」を実現しました。単に再エネ証書を買うだけでなく、新たな再エネ発電所の創出に寄与する手法が重要視されています 。kankyo-business.jp
再エネプラットフォームの大型化: 韓国では、SKグループとKKRが約13億ドル規模の再エネプラットフォームを設立し、太陽光・風力・燃料電池を統合した大規模な電力供給体制を構築しています。開発予定を含め総容量10GWを見込むなど、データセンターなどの大口需要家への供給を視野に入れた動きが加速しています 。docomo.ne.jp
24/7 CFEへの視座: 国際的な環境評価指標であるGHGプロトコル改定に伴い、日本でも「いつ、どこで再エネを使ったか」を時間単位でマッチングする「24/7 CFE(カーボンフリーエネルギー)」の議論が本格化しており、調達の難易度はさらに上がっています 。enegaeru.com
結論:今後の展望
現在のエネルギー市場は、単に「再エネを導入する」時代から、**「不安定な再エネを、いかに安定したエネルギーとして、コスト効率よく需給マッチングさせるか」**という高度な運用能力が問われる時代へと移行しています。
今後は以下の3点がキーワードとなるでしょう。
蓄電池の導入加速: 出力制御回避と電力の安定供給のため、BESSの導入は不可欠です。
追加性のあるPPA: 環境価値の評価厳格化に伴い、新規開発を伴うバーチャルPPAなどの調達スキームが標準化されます。
地政学と経済の調和: 三菱商事の事例が示す通り、コスト競争力だけでなく、サプライチェーンの強靭性と経済的安定性を両立できるかが、再エネプロジェクト成功の鍵となります。
2026年は、これらの課題を克服するための「制度と技術の再構築」が行われる重要な1年といえます。